つらぬくことってすごいなと思った

大手エステサロンに入って東京での研修は、約３週間だったと思う。

それから配属先のサロンに行ってOJTで学んでいく。

研修を一緒に受ける同期は約５０名くらいいたかな？わたしの同期には直前まで宝塚で男役をしていた人がいた。

本人からのカミングアウトはないけど。彼女の凛とした姿勢や顔つきで分かる。とてもキレイな人だし、雰囲気が違っていた。

寮生活の地方組の間では、その人のあだ名はそのまま「宝塚」だった。でも噂だけで本人には誰も確かめることもなく。

だけどわたしはその人とどうしても話したかったので、自分から歩み寄ったな。なんだろ、わたしにはないものを沢山持っていそうだったし。いわば憧れみたいなものがあった。

「じゃあ今度ご飯行こうか」と言ってくれて、二人で遊びに行った。

その時に彼女が免許証を見せてくれて。住所が宝塚だった。やっぱり・・・。

「あたしと仲良くなろうとするなんて、あなたも変わってるね」と言われたのをはっきりと覚えている。なんだろ、この人、かっこいいな・・と思ったな。

彼女は宝塚を引退して、エステに就職。東京に引っ越してきた。六本木のメンズショー（ムキムキ外人の男が踊るやつ）に連れていってもらい、その後は彼女の家にお泊まりした。

わたしは自分のことは話さなかった。そんな対して話すような人生でもないし。それよりも彼女の人生を聞きたかった。お泊まりの夜に、色々聞かせてくれた。

宝塚に入ったときのこと、宝塚でのこと。引退したこと、その後の人生について。なんでエステに来たのかとか・・・。

あまり鮮明には覚えていないけど、はっきりと思い出すのは

「一つのことをつらぬくってすごいな」って。

まだその時彼女は２０歳代後半だったけど。今から第２の人生なわけで。なんだろ、濃いなって、２０歳代なのに。引退を決めたことだって、重いなって。

１０歳代から音楽学校に入って、駆け上ってきたんだなって。ひたむきに。

そのときに感じた。わたしにはそんなものないなって。でも

「わたしもつらぬいてみたい」って強く思ったんです。

１９歳のときでした。

でもさ、わたしに何があるの？

まだ、エステでいくなんて思っていなかった。